日本は世界でも優秀な老舗企業大国

企業経営で最も重要なことは“going concern(ゴーイングコンサーン)”、つまり継続して経営を行うこと。倒産せずに発展し続けることです。

実はあまり知られていないことですが、日本は世界でも珍しい老舗企業がたくさんある国なのです。創業以来200年以上継続している老舗企業は、3000社以上存在すると言われ、そのほとんどは、江戸時代以降に創業した会社が多いのです。

日本に次いで多いのは、ドイツですが、長寿企業は日本の半分の約1500社しかありません。第3位はフランスですが、企業数は約300社しかないのです。なぜ日本には、これだけ老舗企業が多いのでしょうか?

その一つの答えは、日本の老舗企業はほとんどが同族経営であると言うことです。同族経営とは、特定の親族が経営を担っているファミリー企業のことです。

同族経営と言うと、経営トレンドに乗り切れない企業と言うイメージや旧態依然とした経営など、あまり良いイメージを持っていない人も多いかもしれません。しかし、実際には同族経営だからこその企業が生き延びる秘訣が存在しているのです。


同族経営には伝承された資産が多い

同族経営の強みというのは、子孫に伝承するものがあるということです。その大きなものとしては、家訓や教訓に代表されるような「企業ポリシー」、長年の成果で培った「マネジメントシステム」、企業としての資産である「顧客」や危機の際の「準備金」などの資産があります。

なかでも、家業存続のための洗練され、磨かれた各種の危機管理(リスクマネジメント)が長い間、存在しているというのは、大きいでしょう。いざとなったら損失を補填する準備金制度もそうした長年の経験から得られた貴重なノウハウの一つだと考えられます。

こうした遺産を背景に長期的視野に立った経営ができるのが強みと言われています。


複合企業化が進むヨーロッパで同族経営を続ける理由

1875年に創業したスイスの高級時計メーカーであるオーデマ・ピゲ。ブランド名の通り、オーデマ家とピゲ家出身の2人の時計師が創業した会社で、典型的な同族企業です。

顧客は世界中の富裕層で時計の平均価格は約420万円。2016年の売上高は約1030億円だと言います。ヨーロッパのハイブランド企業は、M&Aを繰り返し、複合企業化する企業も増えています。そのため同族経営をするのを止める企業も多いのですが、オーデマ・ピゲは同族経営を止めません。

オーデマ家とピゲ家は経営に対して双方で意見が違う時もあると言いますが、その絆は強く最終的に会社を存続し、発展させるという共通のゴールに向かって経営を続けていると言います。経営については、周囲がどれほど反対をしても、両家が最終的な経営判断をするため、革新的な経営ができると言います。


長期的視野に立った経営ができる強み

たとえば、それまで金やプラチナで作られていた高級時計を他社に先駆けとしてスチール製で作ろうと決めた時、周囲から猛反対にあったそうです。スチール製なのに価格も従来のものと同じ。オーデマ・ピゲが倒産するとまで言われたのに、しかし、両家が最終的な判断を下し、他社に先んじて会社を存続させるだけではなく、発展させることができたと言います。

今でも、経営陣は大切な経営上の決断については、自分の祖先たちがどのように考えて決断をしたのか、そして自分たちの孫世代が自分たちの決断にどのようなことを考えるかをイメージして、決断をすると言います。目先の利益にとらわれず、会社にとって本当に大事なものを残していくための意思決定をしやすいのが、同族経営の強みと言えるでしょう。

企業経営 | 更新日:2017.07.14