事業場外労働制その1
今年の5月と7月、東京地裁において、「事業場外労働制」に関する2つの興味深い判断が下されました。今回は、この2つの裁判所の判断について、説明していきます。
事業場外労働制とは、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者(会社)の指揮監督が及ばないために、その労働時間の算定が困難な場合に、「特定の時間」労働したとみなすことができる制度です。
上記「特定の時間」には、つぎの3つがあります。
1. 事業場(会社)の「所定労働時間」
2. その業務を遂行するのに所定労働時間を超える時間を必要とする場合には、「その業務に通常必要とされる時間」
3. 2の場合で、労使協定が締結されているときは、その「協定でその業務が通常必要とする時間として定めている時間」
今回紹介する判例は、「旅行会社の添乗員に対する事業場外労働制適用の妥当性」に関するものです。
訴えを起こしたのは、阪急トラベルサポート(HTS)の添乗員。いずれも事業場外労働制の適用を理由に残業代を支給されなかったとして、その支給等を求めていましたが、全く違う司法判断が下されました。
●5月11日の司法判断-------------------------------------------------------------------------------------------
東京地裁の鈴木拓児裁判官は、労働者側(添乗員)の請求を全面的に認め、未払い残業代と同額の付加金計約110万円の支払いを命じました。
判決理由で鈴木裁判官は「HTSは添乗員にマニュアルで業務を詳細に指示してツアーを管理し、モーニングコールで遅刻を防ぐ措置なども講じており、労働時間は把握可能だ」と指摘、制度の適用条件を満たしていないと結論付けています。
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●7月2日の判断--------------------------------------------------------------------------------------------------
東京地裁の田中一隆裁判官は「原告は単独で業務を行い、旅先に到着後も会社に必ず連絡して指示を受けたりはしていない。日程も大まかで変更などもあった」と指摘、労働時間の算定が困難な場合に当たるとし、事業場外労働制適用の妥当性を認めました。
その上で1日のみなし労働時間をHTS側の主張と同じく11時間と認定。労働基準法に基づき8時間を上回る3時間分と休日労働については時間外の割増賃金計約12万円、さらに同額の付加金も併せて支払うよう命じました。
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このように、同じ会社の同じ職種の労働者の訴えに対し、同じ裁判所が異なった判断を下しました。訴えを起こした2人の添乗員の業務内容や会社側の指示・命令に多少の差異があったことは予想できますが、ここまで「真逆」の判断をするとは・・・。
そこで、次回以降は、事業場外労働制の導入・運用について、しっかり整理していきたいと思います。
社会保険労務士 笹島 敏邦









