定年・再雇用時の標準報酬月額の決定について

標準報酬月額とは、給与の額に応じて一定の幅で区分した額(例;給与額195,000円以上210,000円未満の場合、標準報酬月額200,000円[13等級])で、社会保険料の計算や将来の年金給付額、健康保険の傷病手当金・出産手当金の給付額の計算に使用されます。
この標準報酬月額は以下のタイミングで決定・見直し(改定)が行われます。


1 入社した時
2 毎年1回(9月)(いわゆる「算定」)
3 給与(固定給)が大きく変動した時(いわゆる「月額変更」)
4 育児休業が終了して短時間勤務などにより給与が下がったとき時
5 定年・再雇用した時

今回は、昨年の9月に制度の見直しが行われた、5の「定年・再雇用時の標準報酬月額の決定方法の見直し」について見ていきたいと思います。

通常、給与(固定給)が変動した時(標準報酬月額で2等級以上の差)は、変動した月の4ヵ月目に標準報酬月額が改定されます(上記③)。改定された新しい標準報酬月額は、変動した月から3ヵ月間の給与の平均額を使うため、例えば、給与が下がった場合、最初の3ヵ月間は下がった低い給与にもかかわらず、改定前の標準報酬月額により計算された高い保険料が徴収されるという矛盾が起こります。

 

定年後、引き続き同じ会社に再雇用される場合は、労働日数や労働時間を減らすなどして再雇用契約を結ぶことが多く、給与も定年前より大幅に下がることが考えられます。その場合、再雇用した最初の月から3ヵ月間の給与を平均し、4ヵ月目に標準報酬月額を改定するというやり方(上記3)では、低い給与で高い保険料を払うことになります。

 

そこで、60歳以降、特別支給(60歳台前半)の老齢厚生年金の受給権がある被保険者については、定年後の再雇用の場合に限り、定年でいったん資格を喪失し、再雇用時に再度資格を取得して(同じ日に喪失と取得を行う)標準報酬月額を決定するといった特例的な扱いができるとされています。これにより、取得した時の給与に応じた標準報酬月額が最初の月から使われるため、給与に応じた保険料負担となります。

 

また、保険料だけでなく、年金との調整(働きながら年金をもらう仕組み「在職老齢年金」)についても考えなければなりません。現在の年金制度では、働きながら年金をもらう場合、毎月の年金額と給与(1年間の賞与を12で割った額を含めた総報酬月額相当額)が調整されるため、給与が高ければ高いほど年金は支給停止されます。上記③の改定の場合、3ヵ月間は年金との調整額が大きくなってしまいます(年金が支給停止されるなど)が、この特例により、いったん資格を喪失し、再度資格を取得して低い標準報酬月額となった場合は、年金との調整額が最初の月から小さくなることもあります(支給停止が解除されるなど)。

 

ところで、再雇用の場合、1年毎の契約となっていることが多く、次の契約期間にさらに給与が下がることも考えられます。これまでは定年後の再雇用に限っての特例でしたが、昨年の9月1日より契約更新時についても同じ扱いを受けることができるようになりました。ただし、契約更新時点で(特別支給の老齢厚生年金の)年金受給権がない場合は、これまで通り上記3により標準報酬月額を改定し、受給権を獲得した以後の契約更新時から、この特例的扱いの対象となります。

 

なお、健康保険から傷病手当金を受けている被保険者が、この特例により標準報酬月額を下げた場合、新しく取得した標準報酬月額で給付額を計算するため、途中から給付額が下がってしまうこともあるので、注意が必要です。


この特例を受けるために必要な手続き書類は、以下のとおりです。

(1)定年後の再雇用の場合
   1 被保険者取得届
   2 被保険者喪失届
   3 就業規則(表紙と定年年齢が記載されている条項)の写し
   4 再雇用後の労働契約書
 ※3、4に代わって「事業主の証明」でも可

(2)再雇用契約更新時の場合
   1 被保険者取得届
   2 被保険者喪失届
   3 更新前の労働契約書
   4 更新後の労働契約書
 ※3、4に代わって「事業主の証明」でも可


 

 

~ この特例のポイント ~

1. 特別支給の老齢厚生年金の受給権がある60~64歳の被保険者が対象
2. 給与に見合った保険料負担
3. 年金との調整の軽減 


パンフレット:http://www.nenkin.go.jp/new/topics/pdf/0816.pdf


少子高齢化が進むことによって、高齢者の労働力をどう生かすかがこれから重要な課題となっていきます。会社としてどのような働き方を従業員に対して示していくのかは、その会社の人事に対する姿勢、もっと言えば社会的な責任ともなりますので、会社の発展を考えるきっかけとしていただければと思います。

 

社会保険労務士法人 すずき事務所
社会保険労務士 横島 洋志
法学部卒業後、飲料メーカー、広告代理店などの営業を経て、
平成19年から当事務所に勤務。出産・育児関係の手続き、就業規則
に注力し、今夏はセミナーを実施予定。セミナーで日本全国をツアー
するのが今の夢。ジムで汗を流すこと、歌やギター、ライブを見に
行くことが趣味です。
 

労働・社会保険情報 | 更新日:2011.04.01