希望退職者制度実施のポイント

昨今の景気の低迷や震災の影響などにより、多くの企業が倒産の危機や経営の合理化を迫られており、人員削減も考慮せざるを得ない現状にあると言っても過言ではありません。
しかしながら、日本の労働法制は労働者保護の性質が強くまた、司法制度におきましても使用者側のリストラについては厳しい要件を課している状況にあります。
そのような中で、希望退職者制度は、解雇回避のための労働者との合意に基づく人員削減策として従来より用いられてきた手法です。

 

1.希望退職者制度を整備する場合の注意点

希望退職者制度による退職は、会社と労働者の任意の合意に基づく労働契約の終了であり、労働者はそれに応募するか否かの決定権を有します。
つまり、同制度はいわば、退職の募集であり、労働者の自由な退職の意思表示に基づく申し込みを受けて、会社が承諾するという合意退職をめざしたものです。
よって、会社は何らかの上積み条件を提示して労働者の自発的な退職意思をうながす必要があります。
一方、制度の対象、目標削減数、募集時期の設定など制度内容は会社の裁量で決めることができます。
このように、希望退職者制度はあくまで、労働者の退職の意思表示、申し込みを誘引(お誘い)する行為で退職を強要するものではありません。そのため一般的には、会社が自由に実施できる制度であるといえます。

2.実務上のポイント


(1)希望退職者制度を実施する場合の手順。
(ア)人員削減の対象、目標人員、募集時期等の検討
      ↓
(イ)退職パッケージの内容検討
      ↓
(ウ)組合や労働者との協議
      ↓
(エ)希望退職者制度導入の決定(取締役会決議等)
      ↓
(オ)労働者への説明
      ↓
(カ)労働者からの応募の受付、承認、合意書の作成


(2)退職パッケージの内容

希望退職の募集にあたっては労働者との協議や説明会等によって、次のような退職パッケージを示すのが一般的です。

○募集時期
○募集人数
○募集対象者
○会社都合退職金の支払い
○退職上積み金の支給
○未消化有給休暇の買い上げ
○再就職支援(特別有給を与え再就職活動をしてもらう)

 

 

(3)その他注意点

・対象者を制限した希望退職の募集も許される
   希望退職者の応募対象を50歳以上に限定したり、地方工場で働く社員だけと限定することも可能です。(あくまで退職を希望するかどうかは労働者の自由選択によるため)

・性別限定は法律に抵触する可能性あり
  女性だけ、男性だけを希望退職の募集にすると雇用機会均等法違反で性差別ととられる危険性があるため避けた方が無難です。

・有能な人材が流失しないか
  好条件を提示して希望退職を募ると有能な人材が退職してしまい、辞めてほしいと考えていた人たちが残ってしまうということがあります。
 そこで、希望退職の募集を行う際に、退職上積み金の支給は、会社が承認した者に限るという条項をいれて募集する方法もあります。そうすれば、会社は残ってほしい人には残ってもらい、上積み金を支給してでも退職してほしい人には退職してもらえる可能性が高くなります。しかしこのような条項を入れると募集に応募してくる人が減ってしまうかもしれないというデメリットもありますので、慎重に検討されたほうがよいです。

・思うように募集が集まらないのではないか
会社側としては希望退職の募集で予定の人数に満たなければ希望退職の募集後に退職勧奨を実施する可能性のあることも告知しておいた方がよいと考えられます。
そうすることで、労働者側も応募者が少ない場合、自分が退職勧奨の対象者になるのではないかと考え、応募に前向きになる確率が高くなってきます。

 

 

社会保険労務士法人すずき事務所 専門部長
特定社会保険労務士 佐藤光一
執筆者紹介:厚生労働省勤務を経て、中小企業の
人事・労務管理の支援を一筋に20年です。

 

人事・労務管理情報 | 更新日:2011.08.05