年次有給休暇Q&A
年次有給休暇(以下、「年休」と言う。)は、憲法27条2項の労働権(休息権)の保障に由来するものであり、使用者が恩恵的に従業員に与えるものではなく、従業員に当然認められた権利となっています。年休は従業員の心身の疲労を回復させ、労働力の維持、増進を図ることを目的として、賃金の支払いを受けつつ労働義務が免除され、原則として自分の希望する日に休暇を取ることができる制度となっています。
年休の発生には、以下の要件があります。
(1)従業員の雇い入れの日から起算して6カ月間継続勤務があること
ここでいう、「継続勤務」とは、例えば従業員の身分が定年後に嘱託に変わった場合や、臨時従業員から正社員に変わった場合に、その変更時にリセットされるのではなく、実質的に従業員としての勤務状態が継続していれば継続勤務とみなさなければなりません。パートタイマーの契約更新の場合でも、いったん契約満了をして、2、3日あけて契約をしなおしたからといって結びなおした契約の時点から6カ月を数えることは認められません。
(2)従業員が全労働日の8割以上を出勤すること
従業員が最初の6カ月間の全労働日の8割以上の出勤をした場合に、10労働日の休暇が与えられ、1年6カ月経過後から勤続年数が増えるごとに労働日が加算された年休が与えられます(下表のとおり)。ただし、1年ごとに区分した各期間の全労働日が8割未満であった場合は、その1年間については、年休は与えられません。
「全労働日」とは、総暦日数から所定休日を除いた日です。使用者の責めに帰すべき事由による休業や慶弔休暇などは労働日に含まれないと解されています。
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勤続年数
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6カ月
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1年
6カ月
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2年
6カ月
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3年
6カ月
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4年
6カ月
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5年
6カ月
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6年
6カ月以上
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付与日数
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10日
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11日
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12日
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14日
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16日
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18日
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20日
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それでは、ここでよく質問を受ける問題について見ていきましょう。
Q 入社時期がばらばらで、人ごとに管理するのが煩雑なのですが・・・?
A 継続勤務の起算点は、本来は個々の入社時期によって変わってきますが、実際に実務を行うときは管理が煩雑となるため、起算日を統一することが可能です。ただし、この場合は従業員に不利にならないように気をつけなければなりません。
例えば、8月1日に入社した場合の従業員の場合、起算日を4月1日入社の従業員と同様として、4月1日から6カ月継続勤務後の10月1日に10日の年休を与えることは、従業員に不利になので可能ということになります。
ただし、こうした方法では、4月1日に入った従業員と10月1日以降に入った従業員で年休を取得するための期間に長短が出ることから不公平感が生じる可能性があります。したがって、その不公平感を緩和するために起算日を2回に分けて、4月1日から9月30日に入社した従業員は起算日を4月1日とし、10月1日から3月31日に入社した従業員は起算日を10月1日にする、といった方法が考えられます。
Q 時給制の従業員で1日の所定労働時間が日によって異なる場合は、どうやって年休の金額を計算すればよいの?
月給制の従業員で、年休をとっても控除しない、と言った場合は、その日に通常勤務した場合の賃金が支払われていることになります。
時給制の従業員の場合で、1日7時間、週5日、といったようなケースでは、1回の年休をとれば時給に7時間をかけた額を払うのが一般的でしょう。
しかし、時給制の従業員でも、所定労働時間が日によって異なる場合はどうなるのでしょう。
例えば、月曜日から水曜日は7時間、木曜日、金曜日は4時間といった場合です。これには、3つの方法があります。
①「その日に通常勤務した場合の賃金」を支払う
この方法をとれば、月曜日に休めば7時間分が支給され、木曜日に休めば4時間分が支給されます。
②「平均賃金」を支払う
この場合は、年休を取得した日前の直近の給料の締め日から3カ月間の平均賃金を算定して、日額を定めることになります。
③「健康保険法による標準報酬日額に相当する金額」を支払う
その人の健康保険法上の標準報酬日額に相当する額を支払います。
①、②は就業規則出の定めが必要で、③は労使協定(届け出は不要)が必要です。
実際②の平均賃金は年休取得のたびに、平均賃金を計算しなくてはならないなど、実務的には手間がかかります。③は、社会保険に加入していないパートタイマーなどの場合にどのように計算するのかなどの問題がでてきます。したがって、①の方法が多く取られるとは思いますが、従業員の不利益にならない計算方法でなくてはならないということに気をつけて、計算をする必要があります。
Q 年休の計画的付与でゴールデンウィークに3日、夏休みに5日、年末年始に5日あてたいのですが、年休のない従業員や日数の足りない従業員はどうしたらよいのでしょうか?
A 計画的付与は、1987年の法改正で導入された制度で、労使協定で有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、年休日数のうち5日を超える部分については、その定めるところにより年休を与えることができるというものです。つまり、5日分は従業員が自由に使える年休として残し、それ以外は事業主が時期を定めて与えることができるということです。これは、我が国の年休消化率が欧米諸国に比べて極めて低い水準にあるため、職場で一斉にまたは交代で年休の消化を促進するために定められました。ただ、実際には、退職時に年休を多く残して消化されては困る、といった理由から計画的付与で有給を使わせる会社も多いようです。
それでは、ご質問のように、まだ入社まもない従業員で年休がない場合や、計画的付与の日数が多いため、従業員の5日の年休を確保すると計画的付与の日数が足りなくなってしまう場合はどうしたらよいのでしょうか。
この場合、不足分に関しては、特別休暇として与えるか、もしくは、使用者の責めに帰すべき事由での休業となるため、平均賃金の6割の休業手当が必要となります。
Q 年休は前年から繰り越されてくる分と新しく付与される分をたして、その人の年休日数となりますが、従業員が年休を請求してきた際に、古いほうではなく、新しいほうから消していってよいのでしょうか?
A 法律ではどこから先に消化しなくてはならないかまでは明確には定められていません。
これに関しては、さまざまな考え方がありますが、当年度発生分と前年度繰り越し分が混在していて労働契約、就業規則、労働協約、労使協定などで特段の定めをしている場合はその定めによることになります。
ただ、有給休暇の時効は2年ですので、古い有給は1年繰り越しても消化できなければ消えてしまいます。有給休暇をとらせたくないという事業主の気持ちもわかりますが、有給休暇は、従業員の仕事のモチベーションを保つためにも非常に重要な意味があります。また、今まで古い方から消化させていたのに、新しい方から消化する、と規定を変更すれば、就業規則の不利益変更にもなるので注意が必要です。
社会保険労務士法人すずき事務所
特定社会保険労務士 中川 美弥
執筆者紹介:法学修士。学校法人総務課、
大阪の社労士事務所を経て、当事務所勤務。
労使紛争防止、解決に特化し、中小企業の
事業主様の強い味方となるため、日々研鑽
を積んでおります。









